お前を笑顔にしたいだけ





私は慣れていたから怖くないけど、村田を知らない汐はやっぱり怖がるのか。



ていうか村田の言い方も悪い。



「せっかく来てくれたんだからそんな言い方することないでしょ」



「知るか、そんなもん」



あからさまに嫌そうな顔してる、わかりやすい。



そんなに嫌だったの?



だってもし汐が来ていなかったらあの後、キスされてたわけで。



そう考えただけで顔があつくなる。



「里穂?
いきなり顔赤くなってどうし」



「なんでもないよ!
あはは、仕事再開しよ!」



汐の言葉を遮るようにして、わざと大きい声を出した。



そんな私を不思議そうに見つめる汐。
そりゃそうなるよね。



「はい、じゃあ村田これお願いね」



私は村田に手に持っていた本を渡し、もう一度返却済みの棚へと向かう。



すると汐も私について来た。