お前を笑顔にしたいだけ





「俺といる時に他の男のこと考えるなんていい度胸してやがんな」



どうやら村田は気づいているようだ。



私が元カレに対して引きずってるということに。



元カレ……



今はその響きだけでも悲しくて苦しい。



「……ごめん」



馬鹿みたいだよね、こんな過去を引きずってばかりの女なんか。



「まあいいや。


お前のせいで目覚めたから次の授業から俺も行く」



きっとわざとだろう。



私に気を遣ったのか、軽く流して話を変えてくれた。



その優しさが、今の自分に心地いい。



村田は私を離し、二人で起き上がる。



そして私が前を歩き、屋上の扉を開けようとしたその時……



「……里穂」



少し掠れた声で私の名前を呼んだ村田。



「何?」
と返して振り向いた瞬間。



そっと、唇にキスが落とされた。



その場に固まってしまう私を見て、村田は笑う。



「驚きすぎ」



そりゃそうだ。
だって振り向いたらいきなりキスされて……



さっきまでの悲しい感情は何処へやら。



恥ずかしくなってぶわっと顔があつくなる。