「……やっぱり、里穂は変わらないな」



村田はそう言って笑い、また私を抱きしめる。
今度はさっきとは違って、優しく包むように。



「変わらない、かな?」



「優しいところも真っ直ぐなところも、全部。
あの頃のままだ」



それは村田なのに。
優しくて、真っ直ぐで。



いつだって私と向き合おうとしてくれた、あなたが一番……



それに当てはまるのに。



「……あのさ、里穂」



しばらくして、村田が口を開いた。



「どうしたの?」
「…わがまま言っていい?」



「わがまま…?」



私を抱きしめている村田が、私と距離をあけて見つめてきた。



その眼差しはやっぱり優しい。
変わらない、晴樹のものだ。



「名前で、呼ばれたい」
「え……?」



「名前で呼んでほしい。
俺のこと」



少し照れくさそうに言う村田は、もう誰がどう見ても晴樹で……



思わず笑ってしまいそうになるけど、失礼だからこらえた。