「……里穂…ごめん、今までずっと。
やっと全部思い出した、俺」



その言葉で、私が泣いてしまって。
涙が勝手に溢れてきて。



「むら、た……」



「ごめん、たくさん傷つけた。
里穂のこと、たくさん傷つけて泣かせた……」



真っ直ぐに私を見つめる村田の瞳は切なげに揺らいでいる。



そんな顔、してほしくないと。
私は素直に思ったから、首を小さく横に振る。



「謝らないで…謝らないでよ……。
生きてくれてるだけで、私嬉しいから。


それに村田、頑張ってた。


記憶のない自分と頑張って生きてたんだよ…思い出してくれるだけで十分だから」



いなくなったと、思ってた。
死んでしまったと勝手に決めつけてた。



苦しかったよ、ずっと。



でも本当に村田と出会って、今はもう……



十分すぎるくらい幸せで。
その上思い出してくれて。



村田も、それに晴樹だって……



温かいくらい優しくて、ずっと私のそばにいてくれたから。