すると村田は、『どうしたの?』と聞く前に私を抱きしめた。



きつく、強く。



苦しいくらいぎゅっと抱きしめられ、私は戸惑ってしまう。



だって何も言わずにいきなり抱きしめられて、平然とできるわけがない。



「……村田?」



だけど私の問いかけに村田の返答はない。
ただ……



その身体は小刻みに震えていた。



寒いから……?
でも、違う気がする。



「村田…?
どうしたの?」



「……里穂…」



私の名前を呼ぶ、その声でさえ震えていて。



「なに?」
「里穂……」



ただ、何度も私の名前を呼ぶ。