ーーー「……寒い…!」
海に着くと村田はまだ来ていなかった。
冬の寒い風が吹き、身体が震える。
海だから余計寒く感じてしまうのかもしれない。
冬の海をじっと見つめる。
やっぱり綺麗だな。
私の周りの環境が変わっても、この海は本当に変わらない。
いつ見ても綺麗なままだった。
それから時間を忘れ、じっと眺めていたら……
「……里穂…」
どこか掠れた、だけど聞きなれた声が聞こえてきた。
間違いない。
この声は……
「村田……」
振り返れば、やっぱりそこには村田がいて。
「ごめん、急に呼び出して」
「……ううん、大丈夫」
……あれ、気のせいかな…?
村田の口調がいつもと違って、どこか柔らかい気がするのは……。



