じっと村田を見つめる。
「……里穂…」
そしたら村田は私をぎゅっと抱きしめた。
「ダメだ。
今の俺、すっげぇ焦ってるよな」
「……うん。
でも、仕方ないよ。
記憶がないって、どれだけ怖いかなんて村田にしかわからない。
私の想像以上だと思うから…」
そんな状態の中、村田は今日まで生きてきたのだ。
現実から逃げようと思っても、記憶のない自分はどこまでもついてくる。
立ち直れた今、本当に村田は強いよ。
「確かに記憶がないってわけわかんねぇし、怖かったけど……里穂と会ってからそんな気持ち薄れた。
お前の隣は何よりも落ち着く」
「村田……」
私と会ってから、なんて。
そんなの、私もだよ。
「私だって村田と会ってから、ようやく前に進もうと思えたんだよ……。
村田に支えられて、私はここまで来れたから」
村田の腕の中は、本当に落ち着くんだ。



