その時。
強い風が吹いた。



「……なぁ」



それに追うようにして、村田が口を開く。



「どうしたの?」



ふと、隣にいる村田を見てみれば、少し俯き軽く頭を抑えていた。



「村田、大丈夫…?
頭痛いの?」



「里穂を、泣かせた…」
「え?」



「海に来て、俺…里穂を泣かさなかったか?」



そこでようやく村田が私の方を向く。
顔色はあまり良くない。



海で、私を泣かせた……?



確かに心当たりはある。



勝手に私が勘違いして、幼なじみやめようって言われると思って。



泣いてしまったんだ。



でも……



「確かに泣いたけど…なんで?
もしかして思い出したの…?」



「なんか、わかんねぇけど……
その後、告ったか?


俺が里穂に、好きだって」



まさにその通りで。



驚いたけど、村田はどこか苦しげな表情をしていた。



「……くそっ、わかんねぇ…」



悔しそうな、苦しそうな。
どこか焦っていて。



私は村田の手を取り、優しく握った。