週末の土曜日。
外に出ると涼しい秋風が吹いていた。
肌寒かったから薄手の上着を羽織り、駅へと目指す。
電車に乗って三十分程経った後。
目的地である駅に降りると……
「里穂」
大好きな人の声が聞こえてきた。
見ると、そこには村田がいて。
「……村田!」
頬が自然と緩みながら、私は村田の元へと駆け寄った。
あの一件以来、私は村田を避けるのもやめ、いつも通りの関係に戻った。
いつも通り、と言えば少し語弊はある。
もう私たちは友達ではなくて、恋人同士なわけであって……
「何一人でにやけてんだよ。
気持ち悪い」
「なっ……!?」
顔に出てしまっていた自分が恥ずかしくなる。
少しだけ俯き、村田に顔が見られないようにすれば小さく笑われてしまった。
「早く行くぞ」
そんな私の行動にはスルーし、村田はそう言って先に歩き出してしまった。