その目はまだ涙で潤んでいて。
「私が里穂ちゃんに謝るべきなの。
ごめんね、何も説明しなくて。
本当はあの日、里穂ちゃんに説明するべきだったのに……」
なんとなく、予想がついた。
もしかして、あのメッセージのこと…?
【別れよう】って言われた理由…?
「……里穂ちゃんに、別れようってメッセージを送る前にもう晴樹は事故に遭ってたの…」
「えっ……?」
その言葉を理解するのに時間がかかって、固まってしまう私。
もう事故に遭ってた……?
なら、どうして……
「それで、晴樹は一度目を覚ましたの。
病院内で運ばれてる時。
本当に血だらけで、痛いはずなのに…話すのも辛いはずなのに……
晴樹は痛いも助けても言わなかった。
ただ、ね。
里穂ちゃんにだけは知られたらダメだって。
里穂ちゃんには隠してって。
また意識が途切れるまでずっと、震える手で私の袖を掴みながら訴えてたの。
里穂ちゃんだけは悲しませたらダメだって、ずっと……」
ずっと、知りたかったその理由。
私のどこがダメだったのか、何度も悩んだその理由は。
想像をはるかに超えるほど大きな晴樹の優しさで。
あの痛々しい怪我の中で、晴樹は最後までずっと私のことばかり考えてて……
「……っ」
どうしてもっと、考えなかったんだろう。
晴樹のこと、信じなかったんだろう。
あの【別れよう】のメッセージの中にはどれほどの晴樹の思いが……
込められていたんだろう。



