「なあ、里穂」
しばらくの間そのままだったけど、ようやく村田が私から離れた。
「……何…?」
「まだ足りねぇんだけど、俺」
まだ足りない。
その言い方に、色っぽさに胸が高鳴ってしまう。
「そんなの知らないよ……」
「最近水曜も誰か人来るし、全然お前とこんな風に二人になれなかっただろ。
だから全然足りねぇ」
それが何を指すのか、何がしたいのか。
言われなくてもわかる。
でも……
止まらなくなってしまう。
この気持ちが溢れてしまうから。
「私は十分だから……!」
なのに村田は無理矢理私を振り向かせる。
間髪入れずにそのまま唇を塞がれて……
ああ、まただ。
また村田のペースになってしまった。
いや、もう最初からずっと村田のペースに私は飲まれているんだ。



