逃げ場なんてあるはずなくて。 二階にある村田の部屋に案内される。 というか半ば無理矢理だ。 「……里穂」 部屋に入って座るなり、村田に後ろから抱きしめられる。 それが久しぶりで、懐かしくて。 ドキドキするし涙腺が緩む。 「やっぱお前しか無理だわ、俺」 その上、そんなこと言うから泣いてしまいそうになるんだ。 そんなの私だって…… 晴樹しか、好きになれない。 抱きしめられて落ち着くのも、側にいたいって思うのも全部…… 晴樹だけなんだ。