きっと私に気を遣ったのだと無理矢理思い込むけど、そんなんで納得できるわけなくて……




「……お母さん」




急いで家の中に入って、リビングの椅子に座っているお母さんに声をかける。



するとお母さんは肩をビクッと震わせて私を見た。



その瞳は、涙で濡れていて……
嫌な予感がどんどん膨れ上がる。



「紗江さんたち、引っ越したんだね」
「……そう、みたいね……」



「晴樹は?
晴樹も引っ越したってことだよね?


また別の学校に転校するんだよね?」



それは遠回しに晴樹は死んでなくて無事だと自分に言い聞かせ、同時にお母さんに訴えていた。



でもお母さんは何も答えずに震えて俯き、小さく首を横に振るだけで……





その瞬間、頭が真っ白になって
視界が数段も暗くなった気がした。