「なんか、ここで離したらダメな気する」



村田はそう言って、ぎゅっと抱きしめる力を強めた。



なんで?
なんで…そんなこと言うの…?



そんなこと言われたら私…諦めきれないよ。



「ダメじゃないよ。
私も村田を支えたい」



記憶のない“村田晴樹”のそばに、どうかいてあげたい。



でもタイムリミット付きで。



「……里穂」
「……っ」



声変わりして、男らしく低い声になっていた。



声だけじゃない。
容姿も全部……男らしくなっていたんだ。



「何言われようと俺はお前が好きだから」



村田は、私を泣かせたいのかな。



そんなこと言われたら私、また泣いちゃうじゃんか。



「……ありがとう。
こんな私を好きでいてくれて」



でも泣いたらダメ。
突き放したりもしない。



不自然に思われないように私は……



村田と、友達という距離を作ろうと思った。