「……里穂?
悪い、さすがに重すぎたよな」
違う、違うよ。
慌てて首を横に振る。
「ごめん、私……気づかなかった。
そんなことがあったなんて」
記憶がないなんて、どれほど不安で怖いことなんだろう。
ずっと思い出せなくて、荒れて。
それでも金髪とピアスになったってだけなのに。
どうして私は……
気づかなかったんだ。
抱きしめられて泣きそうになるのも、温かい気持ちになるのも。
村田に名前を呼ばれて嫌じゃないのも、村田の隣にいるのが落ち着くのも全部……
晴樹、だったからなの……?
「里穂が謝る必要ねぇだろ。
逆に感謝してるんだけど」
ねぇ、私だよ。
里穂だよって言えたら、どれだけいいだろう。
そんなこと言えるはずないのに。



