お前を笑顔にしたいだけ





「苗字?」



私の突然の質問に戸惑う村田。
そりゃそうだ。



いきなり苗字聞かれたらこうなるだろうけど、知りたくて……。





「……つきの」





その時、小さな声で村田は呟くようにそう言った。



「……え……?」



「前は月野晴樹、だったけど。
それがどうしたんだ?」



時間が、止まったような感覚に陥った。



そして音が消える。
一瞬にして頭が真っ白になって、思考が停止して。



海の一定の音でさえも耳に届かなくなった。



だって……だって……




今、村田は……
月野、晴樹だって。



確かにそう言ったよね……?