「村田……」
こんなにも優しくて、温かい人なのに。
私はどうして突き放したのだろう。
気づけなかったんだろう。
「……それでさ。
里穂、辛かったのに俺に幼なじみのこと話してくれただろ?
でも実は、俺もお前に黙ってることあるんだ」
「……え…?」
黙ってる、こと?
その時ふと、心当たりがあったのを思い出す。
確か嫌なことがあったら屋上に行くって、言ってたような気がする。
やっぱり村田にも、抱えるものがあったんだって……
「お前になら、言ってもいいって思った。
ていうかちゃんと里穂には聞いてほしい」
時々名前で呼ばれるのがくすぐったい。



