「……里穂」
こんな時に限って村田は私のことを名前で呼ぶからずるい。
「どうしたの?」
平静を装っているつもりでも、鼓動は速くなっている。
「目、閉じろ」
「え…?」
「いいから」
理由も聞けずに大人しく目を閉じる。
すると村田の抱きしめる力が少し強くなった気がした。
二人の間に流れる沈黙。
最初はドキドキしていた私も、次第に慣れていき今度は眠たくなってしまった。
最近寝ていなかったからだろうか。
学校の外、しかもこの状態で眠たくなるなんて。
……いや、違う。
この状態だから、村田に抱きしめられて落ち着いたから眠たくなったんだ。
だんだんと遠のいていく意識。
どうか、夢をみませんように。
そう心の中で願うのを最後に、私の意識はそこで途切れた。



