村田の胸元を叩くけど、すぐその両手首を村田の片手で掴まれてしまう。
「里穂ー!聞いてる?
新書どこに直すかわからないよ…!」
やばい、このままじゃ汐に見られてしまう。
心ではわかってるのに身体の力は抜けていく一方で。
「里穂……?
どこにいるの?」
そして汐が移動を始めた時、ようやく唇が離された。
息が乱れるのをバレないように一度息を整えてから、私は大きな声を出した。
「し、新書は返却済みの棚の近くだよ…!」
「あ、そうなんだ!
わかった!ありがとう」
ここは一番端の棚だから、カウンターからも死角になっていて助かった。
だって今も村田は私の両手首を掴んだまま、離そうとしない。



