「あ、悟!たこ焼きあるよ!………悟?」
「…え、あ、ああ」
「考え事?」
「昔を思い出してた。」


あれから毎年祭は壱と来ることが恒例となった。


「昔って?」
「壱と初めて会った時のこと。」
「ああ、あの迷子になって大泣きしてた時ね。」
「おい、勝手に捏造するな。大泣きまでしてない。」
「あははは、ごめんごめん。」



あの頃よりも互いに成長して、でも壱の美しさは変わらない……。
あの頃のまま、いやあの頃よりも増したように思う。


浴衣から覗く首筋や鎖骨が妙に色っぽい。


ソッと首筋に手を伸ばした。


「わっ!?な、何するのさ!」


慌てて首筋を隠す仕草を見せる。


………相変わらず冷たいんだな。



「平熱、低いんだな。」
「え?う、うん……もう、いきなり何なのさ?」
「何でもない。」



会うのは一年に一度だけ。


お祭りの、一夜だけ。



でも……壱に抱くこの気持ちは……


「変なのー。」



一夜で消えるものなんかじゃない。



「たこ焼き、食べよ?」
「ああ、うん。」



たこ焼きの屋台で一パック購入して、二人でつつき合う。



数年前、一度だけ祭以外でも会おうと持ち掛けた。



“お祭りって夏の風物詩でしょ?決められた期間だからすごく楽しく思えて、これが毎日あるものなら特別になんて感じなくなるんだよ。だから、また来年待ってる。”


そう返された。


だから名前以外俺は何も知らない。


何処に住んでるのか、普段何をしているのか、連絡先も、歳だって大体同じってぐらいのもんで、俺は何も知りやしない。