壱と初めて出会ったのは十二年前のこの祭りでのことだった。


当時七歳だった俺はまだ親に手を引かれる子供だった。


はぐれないように懸命に付いて歩いていたのだが、ふと金魚すくいに目を奪われている間に、その姿を見失ってしまった。


探そうにも人は波のように押し寄せて、身長が小さかった俺には巨大な壁に見えて、逃げるように林へ駆けて人知れず泣いていた。


そうしたらポンっと肩に触れる小さな手が伸びてきて、



「どうしたの?」



初めて見た白い髪と負けず劣らない白い肌に俺は一瞬で目を奪われて、流れていた涙はあっという間に止まってしまった。



「神、さま………?」
「え?」
「白……綺麗………」
「ああ、うーん……まぁ、そんなとこ。キミのこと助けに来たから神様ってのも間違ってないかもね。」
「助けてくれるの?」
「迷子でしょ?一緒に探してあげる。」



繋がれた手は見た目通り冷たくて、しっかり掴んでいないと消えてしまいそうで……この子は本当に神様なのかもしれないと俺は思った。


壱は一生懸命俺の親を探してくれて、そのうち花火も終わって……
人が捌け始めた時、ようやく父さんと母さんを見つけることが出来た。


「良かったね。」
「ありがと。ねぇ、また会える?」
「………うん。来年またお祭りに来てくれたら会えるよ。」


悪戯っ子のような笑みを見せ、壱は手を振った。