私が猫を嫌いではないと分かったからか此方に猫を手渡してくる。

ふわふわとした毛並みが擽ったい。


「淵くん猫飼ってたんだね」

「うん。実家で飼ってた猫」


同居人の話など忘れて、猫を愛でる。大きな猫なので、それなりに重量があった。

先まで走っていたので、私が抱き上げてしまうと暴れるのかと思いきや大人しくゴロゴロと喉を鳴らしている。


「このマンションペット大丈夫なんだね」

「そうそう。その子が俺の同居人、シャルロットって名前。って事で上がって」

「――……あ、なるほど」


話を引き戻され、気の抜けた呟きが落ちる。

再び上がるように促す淵くんには聞こえてはいないだろう、最初に入って行った部屋とは別の部屋に入り電気をつけた。

シャルロットがまた身じろぎしたので視線を下に下げる。

他人の腕の中でもリラックス出来る子なのか、瞳は閉じられていた。


「……君のご主人は誤解をさせるのが上手だね」


ピクピクと耳が動くもやはり動く様子はなかった。

同居人が人ではなく、彼の様子からはあり得ないだろうけれど、女の子でも無かった事に少しだけ安堵したのは、私だけの秘密だ。