噛み合わない言動は今に始まった事ではない。

それでも、他の子にもこうしているのであればそれは性質の悪い物になり得る。

実際、合コンでは意図的に好意を見せる事もしているのなら、彼からすれば誤解している子が多くいるだろう。

複雑に絡み合ってしまっている彼の感情は、私には理解が難しい。

しかし、難しくとも紐解くくらいなら手伝える筈だ。


「――淵くんにとって、私は合コンに来ていた子と同じなの?それとも……と、特別に思ってくれてるの?」


自分の事に関する事を聞かなければならないのは、羞恥心が込みあげて来ることだけれど。


「……最初に言ったじゃん。瀬戸さんの事は確かに好意的に思ってるって。人として好きだよ。俺からすれば特別だよ。瀬戸さんからすればそうも見えないだろうけど」


それでもまだ、核心的な部分は見えない。


「今だって、瀬戸さんがこうやって真っ直ぐに向き合ってくれるからいい子だなあって。このままこうしてれば、終電無くなって俺の家に来てくれるかなあとか考えてる」


感情に名前を付けようとはしない。

なら、私がもう一歩踏み出してしまえばいいのだろうか。


「――いいよ。淵くんがそう望むなら」

「心配しなくても、何もしないよ」


ようやく彼は安堵したように弱々しく笑った。

男女の区切りも線引きも分かっている筈の彼は一体何を思っているのだろうか。