「それでも、淵くんが分からないって言うなら共有すればいいんだよ。例えば、今日だったらおめでとうの気持ちを二人で」
「だから、ケーキ……?」
「そう!一番分かりやすいでしょう?」
唖然としたように私の手に持たれたショートケーキを見つめる。
パチパチと数度瞬きが成されて、次いで、堰を切ったかのように笑い声をあげた。
「――ふ……あは、ははは!なんっだそれ!?瀬戸さんめちゃくちゃ!」
「そ、そんなに笑う事!?」
「笑う事だよ。あははっ。俺言ってるのそう言う事じゃないのに、いきなり走り出したと思ったらこれだよ?普通の人はこんな事しないって」
苦しそうに尚も笑い続ける。
確かに一貫性のない、突発的な事をした自覚はあるけれど、それを差し引いてもここまで笑われてしまうなんて心外だ。
唇を尖らせながら、持たせたままになっていた紅茶を無言で彼の手から取った。
「はーー……ごめんごめん。笑い過ぎた。瀬戸さん相手に無粋な事言うもんじゃないね。予想外で返される」
言いながらも、まだ含み笑いをしている。
次第にその笑いは微笑みに変わり、彼は私の複雑な心中など知らず、此方に手を伸ばし
「なら、お祝いしてよ。一緒に」
私の買ってきたケーキを手に取った。

