でも万人に好かれる人間なんていないと彼が言った言葉を借りるわけではないけれど、最もな言葉で。嫌がられてしまうのならそれはそれまでだ。
謝る。と言うのは違う気がする。
取り繕うのも違う。
それは自分を守る事であり、彼から逃げる事となってしまう。
「……」
けれど攻め入る事なども出来なくて、結果として口を閉ざすしか出来なくなった。
気まずいが為に缶に口をつけ、液体を喉に通す。
急に味がわからなくなった。美味しいのか美味しくないのかも分からない。
「女の子は好きと嫌いの話が好きだよね。口でなら何だって言えるし、気持ちなんて伝わりもしないのに」
ただ一つ分かることは明確に彼は私から離れたということだけだ。
一括りに”女の子”と大多数の中に入れられてしまったのだ。
深い意味で言ったわけではない。浅く底が見える筈の他愛のないものだった。
近づこうとしただけだった。
なのに彼にとっては分かりえない深い問題だったのだ。
今更言ったことを後悔しても意味はない。言葉を戻すことなんて到底できない。
それならば。
「……淵くん。これ持ってここで待ってて。すぐ戻るから」
「は?えっ、ちょっと!」
私は紅茶を彼に渡して走り出した。
現在時刻、0時数分前。

