こんな偶然があってもいいのだろうか。

絡まれている人が私の友達で、絡んでいる人に寄ってきたのが私の知る人などと。

何て世間は狭いのだろうか。


「あ~~……っと、ごめんなさい、お姉さん達。この人ちょっと面倒くさいから放っておいて……って、あれ?瀬戸さん今帰り?お疲れ様」

「ふ、淵くん?」

「え~~??淵この子と知り合い~~?」

「もうやだ怖い。帰りたいよぅ、千花」


収集がつかない事態になっていて、困惑し、一瞬頭の回転が止まったが、それでもまた意識を戻せたのは京ちゃんがぐいぐいと後ろから服を引っ張っているからだろう。

驚いている場合でもない。


「えと、その酔っぱらっている人淵くんのお友達?」

「はぁい!そうでーす!淵のお友達の佐伯くんです!」

「はいはい。分かった、分かったから大人しくしてて」

「……」


陽気になっているからか、淵くんへの質問にさえ間に入ってくる佐伯くんと言う彼の友達。

その友達を淵くんはぐいぐいと押しのけているのだが、友達の前だと幾分も砕けた様子を見せているので、妙に新鮮に感じてジッと様子を見てしまう。

口調こそぞんざいにも聞こえるが表情自体は、そう言う訳でもなく慣れた様子だった。


「あのねぇ、別に酒飲もうが何しようがいいけど、知らない人にウザ絡みするのやめろっていつも言ってるだろ?」

「だぁって、俺寂しいからさ~~」


助かる事に、このまま淵くんが佐伯くんを連れて行ってくれそうな雰囲気が出てきたので、後は彼に任せて私は京ちゃんを連れてなだめようか。

そう思っていたとき、くいくいとまた服を引っ張る感覚がした。