「……」
ポカンとしていたのか、目をパチパチさせていたのか、自分でもわからない。
ただ、頬を撫でる風が温かいことだけを感じていた。
一度、相手の目は瞬きを見せて、くすくすと笑いが溢された。
「瀬戸さんびっくりしてる」
目を細めて笑うその姿はやけに嬉しそうで、混乱する頭で反論するように必死に言葉を返した。
「そ、それはそうだよ。い、勢いにしたって言っていいことと悪いことがあるよ」
「勢いではあるけど紛れも無い本心だよ」
そんな言葉も間髪入れずに否定されてしまう。
本心である、というのであればそれは重大な事を言われたわけであって、返答しなければならない事だ。
「う、嬉しいけどあの、えっと、」
「今答えなくていいよ。前提にしたって身構えなくてもいいし」
「そういうわけにもいかないと思うんだけど……?!」
「あははっ!瀬戸さんは真面目だなぁ」
緩い、いつもの調子に戻った彼。
何だか最初から振り回されてばかりいるような気がする。彼は良くも悪くもマイペースなのだ。
きっと、マイペースに私に歩み寄っては私の心を奪ってしまうのだ。
まるで擦り寄るように彼は私に身を寄せ、その耳元で囁いた。
「でもね、大学卒業したら、ちゃんとプロポーズするからその時に答えを聞かせて」
END

