神様には成れない。



ここまで笑われるのはいつ以来だろうか。彼は心底可笑しそうに笑い、息も整わないまま私に言った。


「あはは!か、買うって……!ここいくらすると思ってんの?あはは、はは……っあー……ほんっと瀬戸さんには敵わないなぁ」

「そっ、そんなに笑わなくたって!」


確かに突拍子もなく、現実的でも無かっただろう。土地の価値など知りもしない私が口にするのも甚だ可笑しい。

けれど、どうしても彼に応えたかった。無理をしてほしくなどなかった。

しかし、冷静になってみれば勝手な事ばかり言っている。


「うぅ……ごめんなさい。大事なら、大事にしたままでもって……」

「瀬戸さん」

「う?えっ、ちょっ……っ?!」


恥ずべき事だと反省したのも束の間、彼は不意に私を抱きしめた。踏み込んだ。


「あ、わっ、まっ、きゃあ?!」


私も突拍子がないなら彼だってそうだ。

突然の事で対処が遅れて、地面に尻餅をつく。

僅かに衝撃を受けたが、下が柔らかい草の為に痛みはなかった。

何が起きたのか分からずに、彼を見やれば迫るように私の両サイドに手を付いて俯いている。


「なに……」

「やっぱり俺瀬戸さんの事好きだ」


そうして彼は、その黒い瞳にキラキラと光を宿した。