神様には成れない。



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ひとしきり泣いて、泣き止んだ頃に彼は言った。


「こう言っちゃ何だけど、別れるって言われるんじゃないかって内心ヒヤヒヤした」


と。

だがしかし、彼だって先に言ったではないか。


「私は別れようって言われたんだけど」


意地悪にジトッと見つめてやれば、バツが悪そうにその整った顔をしかめる。

次いで、視線を外してボソボソと声を出す。


「あ、あれは、何て言うか一旦ちゃんとリセットしたくて」

「リセット……?」

「ほら、前提の話とか色々あったから」


そう言う意図があったのかと今更ながらに知らされる。

何とも律儀で彼らしい。


「でも、それも無しってことになるんだよね?」


いいの?と言う意味を込めて問えば、彼は吹っ切れたように家屋の方を見遣る。


「ちゃんと、自分の好きって言う気持ちが分かったからいいんだよ。そんなの無くても大丈夫」

「そう」

「あ、でも、瀬戸さんは俺が死んだら迎えに来てくれるつもりだった?」

「えっ?」


不意に問いかけられて、驚く。

思えば、ことこの事に関して私はちゃんと返答した事があっただろうか。あれ以来なかったようにも思う。