さあっと木々の揺れる音だけが聞こえ、日は傾きを見せ始める。
いつしか私の手を強く握っていた彼は、どこにも行けない子供のようにも見えた。
だから私も同じように、祈るように彼の手に額を寄せて寄り添った。
ピクリと彼は反応を見せ、か細く声を上げた。
「ごめん、こんな話聞かせて」
「……ううん。ありがとう、大事な場所に連れて来てくれて」
そう言うと、彼は漸く顔を上げてその綺麗な顔を情けなそうに歪めた。
「ははっ……瀬戸さんは甘いなぁ」
目に少しばかり涙をためて、ただただ笑う。
私も同じように笑ってみせようとしたけれど、目からは雫が零れ落ちた。
「俺、瀬戸さんの事好きだよ」
「ん……」
指先で涙を拭うように頬をなぞる。
彼の温もりは心地よかった。ずっと触れていたかった。
「でも、瀬戸さんに縋ってばかりじゃ駄目なんだよね」
それでも予感がしていたのは、彼が前に踏み出そうとしたのが見えたからなのだろうか。
「ーー瀬戸さん、別れよう」

