何故だか彼が迷子になってしまうような気がして、見失ってしまわないように私もゆっくりと後を付いていく。
「……親が二人とも仕事が大好きな人で、俺と月乃……ううん、特に俺は小さい頃は婆ちゃんに育てられたようなものでさ、月乃に示しが付くようにしなさいって色々教わったりして」
伸びる影を踏まないような距離感。前を歩く枯葉どんな表情をしているのかもわからない。
「厳しかったけど、基本的に穏やかな人でさ、婆ちゃんが元気だった頃は実家の方に来てたりもして、婆ちゃんと月乃と過ごす時間も好きだった」
ふと、思い出すのは一緒に撮られていたあの写真。仲が良かったのだろうと容易に想像できる。
「だからこそ、居なくなった時は悲しくて。……寂しくて」
今だってその表情に暗い影を落としてしまうのは、心から大切に思っているからだろう。
「居なくなる少し前からかな、ニーナと上手く噛み合わなくなったのって」
「……」
「婆ちゃんもボケちゃってたし、ニーナと上手くいかないし、月乃とだっておかしなことになるしで本当は散々だなとは思ってたよ」
弱々しく見えるその様に手を伸ばしかけて、自らの手を握り込む。
こんな同情意味なんてない。
「それでも、梢さんって呼んでた時間も好きだったよ」
「……どんな人だったの?」
ただ、寄り添って聞くことは許されるだろうか。

