神様には成れない。



昨日のままだとも取れる部屋の中。入っても覚えのある花のような香りもしない。

いつも籠もった空気が無かったのはこまめに換気だってしていたからだろう。


「……実は帰ってくるの久しぶりで、シャルロットもまだ会社の部屋に預かってもらってるままなんだよね」


彼は気まずそうに苦笑いを浮かべて、諦めたようにテーブルの側に腰を下ろす。

私も同じように彼の対面に座って、仁菜ちゃんに返された彼の携帯を鞄から取り出し机に置いた。

彼は、あっ、と気付いたような表情を見せる。

そうして視線を携帯から外して、目を伏せた。バツが悪いと言いたげに呟く。


「……俺の事探してくれてたんだってね。月乃から聞いた」

「でも月乃ちゃんも淵くんの行き先知らないって……」

「仕事の邪魔になるからって自分から連絡なんて殆どしないのに、母親に連絡したらしくって、それで」


思い出すのも情けないと自分の行動を恥じる。

私が月乃ちゃんに連絡を取ってしまったせいで、家族まで巻き込んでしまったらしい。私もそれは情けないと思うべきだろう。