柔い風が髪を撫で、閉じた花弁が水面で揺らめく。

不意に微かに彼が隣で笑ったのが雰囲気で分かった。


「――俺ねぇ、そう言う所が人として瀬戸さんの事が好きなんだと思う。他の誰でも思わないのに」

「!」


顔を背けていて良かったと思った。人として好きだと言われた事などないので、嬉しくはあるものの恥ずかしさもあるのでどんな顔をしていいか分からなかったのだ。

けれど、同時にやはりその瞬間の瞳を見ていたかったと思ってしまう矛盾も生んでしまった。

屈託のない、まっすぐな好意をぶつけた彼がどういう風に私を映していたのか。と。


「あ、だからかな。だから瀬戸さんが浮かんだのかも。この子なら俺の願い叶えてくれる。とか」

「か、過大評価だね」


思わずまた彼の方を見てしまう位にはたじろぐ。


「でも淵くんだって、愚痴聞く事になるかもしれないのに一緒に寄り道してくれたんだから、相当良い人になると思うけど」

「そうかな……」


うーーん、と首を傾げて少し考えた後、うん、と頷いて照れたように笑って見せた。


「そうだといいな」