「……」

「……」


思わず数秒固まる。

彼は羞恥というものが薄い。と、私は認識していた。しかし今はどうだ。顔が赤い。

いや、もしかすると暑さにやられたのかもしれない。

などと、おかしな考えを巡らせてパチパチと瞬きを繰り返す。

そんな私の思考が読めたのか、ゆるりと口を抑える私の手を取って、視線も外し、こう言った。


「……さすがに、こんな公衆の面前で平気な顔してれるほど肝は座ってないよ」


と、直接的には言わないけれどつまり照れているのだ。いやしかし、


「だっ、だって、でも……あの、」


反論を述べたいのに此方もどうにも出来そうにもなく、言葉が続かない。


「さっきからの流れで見世物みたいにもなってるしさ。あ、でも瀬戸さんから抱きついてくれたのはちょっと嬉し」

「わーー?!!」


慌てて声を上げて誤魔化す。よくよく見てみれば確かに見世物になっているようで、視界に入る限りでも此方を見ている人が数人いた。

以前告白した時も周りに誰もいないと思っていたが、もしかすると見聞きしている人がいたのでは無いかと今更ながらに思い悩む。


「っ~~!!」


そう思うだけで羞恥で一杯になり、居たたまれなくなり、


「あ、あの!話はまた改めて!明日!明日大学の補講が終わったらお家に迎えに行くから!!」

「え!?瀬戸さん?!」


彼の返答を聞く前に無理やり約束を取り付けて逃げたのだった。