猫のようにまた私に頬を擦り寄せて震える声を落とす。


「瀬戸さんが思ってるよりずっと、好きだよ」

「っ〜〜!」

「好き」

「ふ、ふちく……」

「好きだ」


それは止むことのない告白。

繰り返し繰り返し成される告白は、まるで境界線を越えてしまった日の事を彷彿とさせ、ブワッと体に熱を持たせる。

どこか泣くような声にも聴こえてくるそれ。しかし、不意に泣きたくなったのは私の方だ。

熱に浮かされて夢見心地。なんて事にもなれず、熱によって私は一気に現実へと舞い戻ってしまったのだ。

今ここは何処で、どんな状況で、二人きりでは無いなどと当たり前の事を思い出してしまったのだ。

ああ、思い出したくなんてなかった。


「せとさ……」

「まっ、まって!」


また言葉を落とそうとする彼の口を慌てて自らの手で塞いで止める。

私から抱きついておきながら何たる所業だとは思うけれど、我に返ってしまったのだから仕方がない。

羞恥で顔が赤くなるのを感じながら、彼の顔を覗き込む。


「へ?」


と、そこに待っていたのはきっと私と同じように赤い顔だった。