神様には成れない。



雫が一粒落ちて地面を濡らす。水分が視界を歪ませた。


「大丈夫?瀬戸さん」

「……うん」


何故、どうして私が泣くのかなどと彼は問いたださない。

代わりに未だ座り込んでる私に手を伸ばす。


「……」


温かい手のひらに触れた。久しぶりの彼だ。淵くんがここにいる。

キュッと手を握り、更にボロボロと溢れ出てくる涙にも構わずに私は更に手を伸ばした。

もっともっと、彼に。その温もりに触れたい。


「えっ?え、あ、あの……瀬戸、さん……?」


彼の背に腕を回せば、明らかに動揺したような声が上がった。

公衆の面前と言うのをさほど気にしない彼だ。動揺したのは私の行動についてだろう。私の方が気にするのにどうした事かと思っているのだろう。

しかし、もう少し強く抱きしめれば彼はそれを追求せずに私の頭を撫でた。


「……ごめんね、色々」


頭上から降り注ぐのはどこまでも優しい声で


「巻き込むつもりなかったのに、結局瀬戸さんに助けられた」


優しすぎる言葉で。ああ、私だって仁菜ちゃんの事、少しだけ分かる。

優しさは痛くて寂しくなるのだ。優しいだけでは救えないのかもしれない。


「巻き込まれてもいい」

「え?」

「巻き込んでよ。自分一人で抱え込んで、何処かに行かれるよりよっぽどいい」


頭を撫でていた手に少し力が入ったのが分かった。