仁菜ちゃんは痛みを堪えるようにぐっと唇を噛み締めて、手の内にあるピアスを私に渡した。
「せっかく似合ってるんだから、壊れて台無しにならなくて良かったねぇ」
「あ、ありがとう。あ、手!手擦りむいてるから手当て、あ、でも仁菜ちゃん体調悪いから病院……」
「ううん、平気」
「でも……」
「病気とかじゃなくて、体力落ちてるだけだから」
大丈夫だと示すように、ニコッと笑って見せる。
しかし、またグッと唇を噛みしめ、髪で顔を隠すかのように俯いたままポツリと呟く。
「……えへへ、本当に情けないなぁ」
か細く途切れそうな声を漏らして、ゆるりと視線を此方に向けた。
丸い瞳が潤んで揺らぎ、でもきっと彼女は私に涙なんて見せはしないだろう。
羨む様に続ける。
「……でも、私も千花ちゃんになれたらきっと、ナナくんと別れた後も幸せな恋、出来たのにね」
「仁菜、ちゃ」
「……ごめんね、千花ちゃん。迷惑かけて」
言葉を追求するなと言いたげに謝りを残す。
許して欲しいとも許されなくともいいというように、仁菜ちゃんは淵くんに向かってではなく、私に向かって言葉を紡いだ。

