彼女は自分の想いを吐露するようにポツポツと零す。


「それでもきっと千花ちゃんはナナくんの事大事に思ってて、だからあんな風に怒ったんだよね」


返答がなくとも、言葉を吐き出す様は現実を受け入れているかのようで。


「ナナくんだって、千花ちゃんの事大事だからこそ私から千花ちゃんの事遠ざけようとしてるんだろうなぁ」


一つ一つ事実を確認しているようで。


「分かってても。それでもね、千花ちゃんが羨ましいなぁ」


まだ消えない彼を追いかけているにすぎなかったのだ。

ピタリと止めたつま先は此方に向き直り、安易に距離は詰められる。


「今は違うって言われたって、間違いなくあの頃のナナくんの一番は私だったんだよ」


また、あの眼が私を見ていた。蛇を想起させるような獲物を狩るような瞳。