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それから莉子ちゃんとは別れて、元居たお店に戻れば木嶋くんの姿はなく、お店の前には仁菜ちゃんだけが私を待つように立っていた。


「よかったぁ。戻って来てくれて」


私と目が合えば何処か安堵したような表情を見せて、汗を拭うかのように前髪を払う。

この炎天下の中待っていたのだろうか。


「木嶋くんは?」

「ちょこっとだけ私と話して帰って行ったよ。千花ちゃんに悪い事したって言ってたよ」

「そう……」

「悪い事って言うなら私だって悪い事したのにねぇ」


そう言って、仁菜ちゃんはクスクスと笑い一歩歩きはじめる。

それに習うように私も足を動かす。

私よりも小さい歩幅で、ゆったりとしたペースで何処かに向かう。


「でもね、そんな事いくらでも言われるような事で、一々相手してたらキリなんてないんだよ」


だから謝りもしないし、私は悪くもないと主張しているようだった。逆にそれが潔く感じて何も言えなくなる。

もとより、先の事に関して言及する気などなかった。