彼女は驚いたように目を見開いて、勢いに任せるように言葉を吐き出した。


「まっ、待ってよ!傷つくかもしれないのに瀬戸ちゃんを送り出せるわけないじゃん!」

「……傷ついてもいいんだよ」

「よくない!瀬戸ちゃんは我慢しすぎなんだよ!何でもかんでも!」

「それでもね、私淵くんのところに行きたいの。話しをして、傷ついても、それだって必要な事だから」

「だとしても!!」


納得なんて出来ないと、また私に伸ばされようとした手をかわすように一歩下がる。

私の背を押してくれた京ちゃん、傍観者であれと言う佐伯くん、今のうちに見限れと言う月乃ちゃん、傷つきに行かなくていいと言う莉子ちゃん。

沢山言葉を掛けてくれたけれど、それでも自分を納得させるのなんて自分自身以外あり得ない。

それこそきっと私は後悔する。


「――……きちんと納得した上で、それからもう一度考えるから」

「瀬戸ちゃん……?」

「それにね、私莉子ちゃんが言うように良い子なんかじゃないんだよ」


また一歩彼女から下がって、笑みを作って見せる。


「ねぇ莉子ちゃん。誰かが私を責めて、私を悪く言っても莉子ちゃんだけは私の味方でいてね」


私自身が私を責めてしまうのだ。一人だって味方が居れば心強い。そんな狡い私なんだ。そんな我儘を聞いてほしいのだ。

京ちゃんには背を押してもらった。莉子ちゃんには背を支えてもらおう。

友達の在り方だって個々によって違うのだ。恋人の在り方だって当たり前に違う。

じっと彼女の瞳をまっすぐに見つめれば、莉子ちゃんは困ったように、諦めたように笑いながらもコクリと頷いた。


「……日頃から頼りにしてる瀬戸ちゃんの頼みなら仕方ないなぁ」


そう言って、それ以上は何も言わずに私を見送ったのだった。