驚いて、顔を上げて彼の方を見るのだが肝心の声が出ない。
「待って待って、災難って言いかたは失礼じゃない?双方に」
代わりのようにこの状況を察したであろう莉子ちゃんが、話の主導権を握ろうと身を乗り出す。
しかし、高校生の時の仁菜ちゃんと淵くんを知っている木嶋くんの話の舵を第三者がそう易々と奪える物ではない。
「でもほら、中島覚えてないかな?卒アル見せた時に話した話。顔がいい奴と付き合ったら不安でそれこそメンヘラみたいになるって話」
「――……あ、あぁ……そう、そうだったんだ。私が淵くんを見たことあったのって……」
「あれ?会ったことある?中島が好きそうな顔……」
「い、今はね、この千花ちゃんがナナくんと付き合ってるんだよ」
「えっ!?そうなの!?」
どこか震えたような、緊張したような声で仁菜ちゃんが話のタネを投下する。
駄目だ。この流れは駄目なのだ。嫌な流れが目に見えるようだった。
そうして、何故だか彼女は狭いにも関わらず、莉子ちゃんと私の間に椅子を持ってきて座った。

