それに気づいた後、自分の小ささを実感してしまったような気がして反発心が芽生える。

これくらいどうってことないと自分で思い込みたかったのかもしれない。


「――……あの、電車乗ってもいいなら、最近友達に教えてもらったパンケーキが美味しいお店があるんだけど」

「私パンケーキ好き~~!今の時間帯なら電車も座れるよね?いこいこ」


僅かな対抗心で示すここから離れた場所に彼女は二つ返事で了承してくる。

それでも、と聞きたいことがあった。


「でも仁菜ちゃん、」

「ニーナでいいよ!水無川仁菜、今更だけどよろしくね」

「あ、えと、瀬戸千花です」


つられて自己紹介をしてしまい、また流されそうになる。

私は敵対されていると思っていたのだが、それも思い込みだと言うのだろうか。

だがしかし、今いるこの場所と言うのは彼の生活圏内に入っていて、彼を探していると思えてならないのだ。これすらも邪推のしすぎだと言うのか。


「……じゃあ、ニーナちゃん」

「なぁに?」

「淵くんを探してたんじゃないの?」

「……」


彼女は笑みを崩さないままに口を閉ざし、視線を左上に投げて、一層口元に弧を描いた。


「千花ちゃんもナナくんの事探してるんじゃないの?」

「それは……」

「……まあまあ、それはいいとして早く行こ?日に当たりすぎるのも体に毒だよ」


そんな事は無いはずなのに、まるで取るに足らない事のように流して駅の方へと歩き始める。

一体彼女の目的は何なのか。彼女が考えてる事は何なのか。

何も分からないままに、一緒に居れば見えてくるかもしれないと甘い考えを持って、私は彼女を追って歩き出したのだった。