「ねぇねぇ千花ちゃん、今暇?暇なら私と遊ぼ?」

「えっ、なん、何で私……」

「あのね、私甘いもの食べたいからお店の案内お願いできないかなぁって」


戸惑う私を気にも止めず、まるで抱きつくようにお腹に手を回され絡みつく。

妙に距離感が近いこの子は一体何なのだろう。最初に会った時とはまるで印象が違う。


「……千花ちゃん背高いのに細いね。私なんかお腹出ちゃって」


でも甘いものは食べたいんだけどね。なんて言いながら、ぺたぺたと勝手に私のお腹周りを触る。

過度なスキンシップに一瞬ぞわっと鳥肌を感じた。


「っ、あ、あの!ひ、人に、さ、触られるの慣れてないからごめんね!」

「あ!そっかそっか!こっちこそごめんね!てっきり……」

「?」

「ううん!何でもない!」


こんな時でも最大限に言葉を選び手を解く。

仁菜ちゃんは何か言いたげにしながらも口を閉ざして、ニコニコと私に笑みを向ける。

前回とは違い、含みの無い無垢な笑顔。ああ、確かに笑った顔は可愛らしい。

などと、ぼんやりと彼女の顔を見ていた。


「ね、ね、何処かオススメのお店とかある?」

「え?えっと……」


まだ行くとは言っていないのだが、まるで行くことが決定しているかのようにするりと私の腕に腕を絡めてくる。

先に触られるのに慣れていないと断っているのに、そうして腕を組んでくるのは彼女の癖なのだろうか。そう言えばあの日も淵くんの腕に手を回していたな、と思い出してしまい、心中では靄が渦まく。

私はこんなに余裕のない人間だっただろうか。