『――……いいんですよ』

「え?」

『ここで兄を見限っても』

「な、なんでそんな事……!」


思わず前のめりになって、その意味を問いただす。

また意地悪なのだろうか。彼女は淵くんに関しては少々過敏になっている所がある。


『兄は……いえ、うちの家が普通とは少しズレていて、それがそのまま私と兄の性格に反映されているものですから理解し難いことも多いと思います』

「普通じゃないとか普通とかそんなのは関係ないよ」

『ありますよ。仁菜ちゃんの普通とは違ったから兄を変えてしまったんです』

「っ……」


結局また仁菜ちゃんなのかと、唇を噛んだ。

ギュッと握りめた掌には爪が食い込んだ。