「此処に住んでる淵くんに用事があったのですが、居ないみたいなのでまた改めて来ますね。怪しい行動してすみませんでした」


管理人さんも此処の管理をしているだけに、怪しい人に声を掛けずにはいられなかったのだろうと、簡単に謝りを述べて足早に此処を去ろうと思った。のだが、


「もしよろしければ、淵さんが帰って来た際にお伝えしておきますが」

「いえ、あの、……――」


そこまで急を要する内容でもないので、と断ろうと思うけれど思い留まる。

後々連絡が付けばそれでいいが、もし連絡が付かないのであればこれも一つの手段になるかもしれない。

折角の申し出だ。お願いしても良いだろう。


「……では、瀬戸千花が来ていたと伝えて頂けますか?」


たったそれだけ、彼が分かってくれればいいと頼んだのだが管理人さんは何処か確信したような微笑みを見せて静かに言った。


「やはり、貴方が瀬戸さんでしたか」


と。