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京ちゃんに背中を押された勢いで彼のマンションの前に来ていた。

来ていたのだが。


「……いない。のかなぁ?」


エントランスでインターホンを押してみるも全くもって反応などない。

何処かで“やっぱり”と思う気持ちもあって、少しだけ気持ちが落ち込んでしまう。

しかし落ち込んでいても仕方ないのは事実。


「いや、でもなぁ……」


次なる行動を考えるのだが躊躇はしてしまう。


「……」


うーん、と考え込んで手にするのは彼の部屋のカードキー。

勿論これだけではエントランスを抜ける事が出来ないのは分かっている。

それでも、方法がないわけではないのだ。セキュリティーがしっかりしているとは言え抜け道はある。

誰かが開けてくれればいいのだ。そう、例えば此処の住人とか。

開けてくれた時に一緒に入ればいい。何かを問われても部屋の鍵は持っているのだから言い逃れも出来る。


「いや、いやいやいや……!」


そこまで考えたけれど、勝手に入るのはまずいだろう。