いくら口で言ったって人とぶつかる事は私にとってどうしたって、怖いのだ。

狡いかもしれないけれど、逃げ場を作らせてほしかった。

うまく笑えているのか笑えていないのか、分からないけれど京ちゃんの目を見つめる。


「……」


彼女は逡巡するように瞳を微かに動かして、間を持たせた後に確かな強い視線を此方に向けた。

そうして、ニッと私に大きな笑みを見せて、一歩此方に踏み込んだ。


「そんな心配しなくたって、いくらでも慰めてあげるわよ!」

「京ちゃん……」


そう言ってくれるだけで心強いような気持ちになる。

ああ、私は一人じゃないんだって、なんだか少しだけ泣きそうにもなった。


「だから……」


京ちゃんは徐に私の両肩を掴むと、そのままぐるりと私を反転させた。


「え?え?」

「私も無責任にまた、背中押してあげるから、行って来なさいよ!」

「まっ、待って、でも私どうすればいいか……」

「そんなもん、アイツの家で待ち伏せなりなんなりしてやればいいのよ!」

「ええっ?!」


なんて無茶苦茶な事を言うのだろう。そう思うのに、背中を押されるだけで一歩、二歩、動かす足が軽くなる。

以前も彼の事に関して京ちゃんに背中を押してもらったな、なんて今更ながらに思い出して少し笑ってしまった。

そうして私は彼の元へと駆け出したのだった。