こんな謝りなんて薄っぺらい事など分かっている。しかし、謝らずにはいられない。

地を踏みしめれば影が揺らいだ。


「やだ、何で謝るの?どうしたの?」

「私、京ちゃんの言う『格好いい千花』には成れないみたい」

「!それは、その話は……もういいじゃない」


過ぎたこと。と、掘り返される事を拒む。

視界に映る影が動いて、私の影に僅かに重なった。


「勝手に千花のイメージを押し付けただけに過ぎないんだから、謝る程の事じゃないわ」

「ううん、結果的に無責任に京ちゃんの背中を押してたんだよ」


首を振って、脳裏に浮かぶ雑念を振り切ってみせる。

暗い話をしたいわけじゃない。否定してほしい訳じゃない。

ただ、聞いてほしかっただけなのだ。


「本当に格好いいのは努力して変わった京ちゃんなんだよ」

「えっ、いや、私はそんな事ない、んだけど……」


戸惑う様に視線を彷徨わせて声が小さく絞られる。

自分が頑張った事を京ちゃん自身が自覚していないわけがない。コンプレックスを大々的に告白できる程に、強くなれたのだ。

その強さが私だって欲しかった。


「もしかしたら、私泣いちゃうかもしれないし、もしかすると、駄目になるかもしれない」


だから、と、情けなく吐き出すのだ。


「その時は、私の事慰めてほしいの」


そんな、私の弱い弱い宣言を。