神様には成れない。



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そうこうしながらも、漸く今日の目的に辿りついたのだが、だからと言って何かがあるわけでもない。

ただただ


「すっごいお花いっぱいだね!可愛い!」


私が嬉しくて、只管馬鹿みたい可愛いと連呼するだけだった。

私の大学の最寄駅から4駅先の植物園。行く機会もなく、今回が初めてだったのだが、ここまで広大な花畑があるだなんて思ってもみなかった。

見た事のある花から名前の知らない花まで色取り取りなものが沢山あって、視覚に暖かい色彩が飛び込む。

単純だけれど、先の出来事も忘れてしまうくらい嬉しい気持ちになってしまう。


「……思ってたより喜んでくれてるみたいでよかった」


どこか見守る様に、私の後ろに立っていた淵くんはクスクスと笑いながらも、一緒になって隣にしゃがみ込む。

何を思いながら花を見ているのか分からないけれど、その横顔を盗み見ながら私は不思議な気持ちを抱いていた。

いつもはバイト先と、バイトの帰りに話すくらいの仲なのに、いきなりこんな風に出かけているのが何とも不思議だった。


「――……多分、女の子だったら淵くんと出かけるならどこでも喜んでくれると思うよ。少なくとも連絡先を渡してくれるような好意を持っている女の子なら」


だからこそ、そう言ったのだ。特に深い意味もなく、あまり女の子と関係を持っていない風に見える彼が何故私と一緒にこうしているのかと言う疑問に近かったのかもしれない。

彼が回答を持っていない以上、答えなど出ない事は分かりきっていたけれど。

淵くんは赤い花弁に軽く触れながら、「うーん」と唸り考えた末にこう言った。


「でも、俺がその子と出かけたいかどうかはまた別問題だし」