しかし、首を横に振ってそうじゃないと吐露する。


「――……千花ちゃんもあと二か月もすれば年齢的には大人になるから言っちゃうけど、お父さんと二人暮らしになって考えるのよね。これで良かったのかって」

「……」

「お母さんは何にも後悔しないように生きてきたけれど、貴女は貴女だもの、そんな生き方を強要するのは間違いだったんじゃないかなって」


後ろ向きになるな、感謝の心を常に持て、今まで言われたキツくも正しい言葉は沢山ある。正しいと思っていた事に間違いだって混ざっていたかもしれない。

それでもお母さんは、自分に自信を持った発言をいつだってしていて、間違いだってお父さんに言われれば考えを改めて、違う提案だってしていた。


「反抗期らしい反抗期もなかったけど、八つ当たりだって理不尽だって泣いたって良かった筈なのにって」

「……」


私に確実に影響を与えたこれまでの人生を肯定するにも否定するにもまだ判断がつかない。

それでももう、無責任に誰かの全てを肯定するのは嫌だった。

何も悪くないよ、なんて言わない。だからと言って、それで良かったんだよ、とも言えない。

只一つ、言えるのは何も変わりない私自身の事。


「――……それでも私は、何も後悔してないんだよ。今までずっと幸せだった。明日だってきっと幸せなんだから」


向こうに帰ってもその幸せを取り戻しに行くのだと、決意すらしている。

怯えはしない、逃げもしない、向き合って、ちゃんと私の想っている事を伝えに行くのだ。

ニッと笑って見せれば、お母さんも何処かほっとしたように微笑みを浮かべ「ありがとう」と呟いた。


「でも、明日帰っちゃうとお父さんも寂しがるから、出来れば予定通り家でゆっくりして行ってね」

「……あ、そうだよね」


勢いだけで後の事を考えていない自分自身に思わず笑ってしまえば、お母さんもクスクスと笑いだしたのだった。